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神戸地方裁判所 昭和59年(ワ)983号 判決

原告

田賀明

原告

中村自明

原告

前田武和

右原告ら訴訟代理人弁護士

辻公雄

原田豊

松尾直嗣

斎藤浩

国府泰道

大川一夫

小田耕平

吉川実

桂充弘

永田徹

森谷昌久

被告

兵庫県

右代表者知事

貝原俊民

右被告訴訟代理人弁護士

松岡清人

同 指定代理人書記

百瀬豪

谷口勝一

同  事務吏員

安田詔宣

深田修司

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告は原告らに対し、それぞれ金三四万円及びこれに対する昭和五九年八月五日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

主文同旨の判決

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  事実経過及び被告の違法行為

(一) 原告らは、行政監視活動を続けている市民グループ「市民オンブズマン」の会員であり、かつ兵庫県に在住する兵庫県民である。

(二) 原告らは兵庫県北摂整備局において接待費などに違法・不当な公金支出があるとの内部告発を受け、これをもとに、昭和五九年五月三〇日、他の市民オンブズマン会員三名及び弁護士一名と共に兵庫県庁内の監査委員事務局を訪れ、右兵庫県北摂整備局の公金支出についての監査請求書に原告田賀明作成の事実調査報告書を添付し、これらを同県監査委員らに提出して監査を求めた。

(三) ところが、応対にでた同監査委員事務局長の坂田実は、「支出についての領収書などが添付されていなければ請求に必要な書類が不備である。」と述べて受理を拒み、その三日後の同年六月二日同監査員矢尾田京兵、高田義一、住本良二、尾崎光雄らは、右監査請求書を、監査委員全員一致の判断の下に右監査請求を受理出来ないと判断した旨の文書とともに原告らのもとに郵便で送り返してきた。

(四) 原告らは、さらに、昭和五九年六月六日、一部内容の判明した公給領収書の写し及び前記市民オンブズマン発行の「号外」を新たに添付して、市民オンブズマン会員三名及び弁護士一名と共に兵庫県庁の監査委員事務局を訪れ、兵庫県監査委員らに監査を求めた。ところが、この時も前記坂田事務局長が、さらに証拠書類や請求書の内容の具体性を要求し、結局、同局長並びに同監査委員らは、右監査請求を受理しなかつた。

(五) 原告らは、前記不受理は住民監査制度の法趣旨を無視する違法なものであるので、損害賠償請求をするべく決定し、その内容は読売、朝日、毎日、神戸等の同年六月九日の新聞に報道された。

(六) 右報道を知つた由か、翌六月一〇日に兵庫県監査委員から原告田賀に電話があり、昭和五九年六月一三日に話しがあるから出頭するよう告知された。

(七) 六月一三日原告らが監査委員事務局を訪れたところ「監査請求は受理する、但し一部補正を加えるよう」同事務局より告知された。

(八) 地方自治法二四二条一項によれば監査を求めるときには「不当な公金等の支出を証する書面を添えること」が必要とされているが、住民に監査請求を認めた趣旨からして右添付書面とは新聞の切り抜きを書面にしたものでもかまわないし、また、住民の作成した事実報告書でも構わないと解すべきであるとされており、実務の取扱も同様に右添付書面についてはゆるやかに取り扱われている。すなわち、「右書面には、別段の形式を要せず該当事実を具体的に指摘すれば足り(行実・昭二三・一〇・二三自治行発五二号)」「他人からの聞知、新聞記事の切り抜きなどを書面とした場合もこれに該当する(行実・昭二三・一二・二五自発一一四七号)」とされており(別冊法学セミナー基本法コンメンタール地方自治法二三八ページ)、さらに、「これを証するような形式を備えていれば一応受付なければならない、それが事実であるかどうかということは、監査委員の監査によつて初めて明らかになつてくるので、その前に事実を証する書面でないとして拒絶するというようなことは、法の趣旨でない(昭和二三・一〇・三〇自発第九七八号各都道府県総務部長宛自治課長回答)」とされている(地方自治関係実例判例集帝国地方行政学会刊二二〇三ページ)。

(九) しかるに被告は前述のように公給領収書等が添付されていない等、本来不可能に近いことを要求して監査請求の受理を拒否したが、右不受理は前述より明らかなとおり違法な行為である。

仮に、被告が主張するような書面をつけないかぎり監査請求を受理しないということを違法でないと解するとすれば、議員でも公務員でもない一県民が書面で執行機関又は職員の不正行為を完全に立証するということは事実上不可能であるといわざるをえず、事実上住民監査請求を為すことを不可能にするとともに、監査制度を設けた趣旨を没却し、法が監査委員に付与した調査権限を監査委員自ら放棄することになるのであつて、それは、極めて違法な解釈であるといわざるをえない。

2  被告の責任

被告は、県の職員である坂田事務局長並びに監査委員らが前記のように原告らの二度にわたる監査請求を書類不備を理由にいずれも受理を拒絶しており、右不受理は前述のように地方自治法二四二条一項の解釈を誤つた違法な行為であるから、原告らが被つた後記損害について国家賠償法第一条一項の規定により賠償する義務がある。

3  原告らの損害

(一) 交通費および日当

本来昭和五九年五月三〇日に受理すべき義務があるものを被告が違法に二度にわたり拒否した結果、同年六月六日、同一三日の二度にわたり原告らは、本人あるいは代理人とともに兵庫県庁へ行かなければならなくなつた。その際の原告らの日当および交通費は各自四万円を下らない。

(二) 慰藉料

被告の違法な不受理は原告らの予想をはるかに越えるものであり、右不受理により正義感にもえる原告らは著しい精神的苦痛を被つた。右苦痛を金銭で慰藉するには各自金二〇万円を下らない。

(三) 弁護士費用

現行の民事裁判の実情に照らせば、訴えの提起は弁護士に委任するのが通常であり、本件は国賠訴訟という困難な事案であり、弁護士による代理は不可欠と考えられるのであるから、弁護士費用は本件違法行為と相当因果関係のある損害である。原告らは本訴請求をするに際し弁護士である原告訴訟代理人らに訴訟代理を委任し弁護士費用として原告各自金一〇万円(総額三〇万円)を支払う旨約束した。

4  結び

よつて、原告らは被告に対し各原告に対し各自合計金三四万円づつおよびこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五九年八月五日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  同1の(一)の事実中、原告らが兵庫県民であることは認めるが、その余は不知。

2  同1の(二)の事実中、原告らが、原告ら主張の日に、原告ら主張のような監査請求書を提出したことは認めるが、その余は不知。

3  同1の(三)の事実中、原告ら主張の日、監査委員が監査請求書を原告らに返戻したことは認めるが、監査委員事務局長の坂田が原告ら主張のように述べて受理を拒んだとの点は否認する。

右坂田は、事実を証する書面として添付されている事実調査報告書の作成人が請求人である原告田賀明自身であり、また同報告書に「市民オンブズマンが情報を得たものである。」との記載があるが、誰が誰から情報を入手したものか不明であり、客観的に事実が推定できるもの、例えば新聞の切抜きとか領収書のようなものが必要ではないかと述べたものである。さらに、受理権限のない事務局長である坂田限りにおいて受理を拒むことはありえない。

4  同1の(四)の事実中、原告ら主張の日に、監査請求書が再提出されたことは認めるが、坂田事務局長が原告ら主張のような要求をしたとの点、および監査委員らが、結局、監査請求を受理しなかつたとの点は否認する。

本件監査請求は、これを昭和五九年六月六日付けで受理したし、またその監査の結果は、同年七月三一日付で原告らに通知するとともに、同年八月三日付で公表している。

5  同1の(五)の事実中、新聞で原告ら主張のような報道がなされたことは認めるが、その余は不知。

なお、本件監査請求の過程において、監査委員にも事務局長にも何ら違法行為は存しない。

6  同1の(六)の事実は、争う。

但し、六月一一日に、監査委員事務局職員が、原告田賀に対して電話をしたことはあり、その内容は、監査請求書の補正をするよう通知するものであつた。

なお、右電話は、新聞報道とは全く無関係のことである。

7  同1の(七)の事実は認める。

8  同1の(八)の事実中、監査請求については、公金の支出等を証する書面を添えることを必要とされていること、および原告らの掲げる行政実例の存することは、各認めるが、その余は争う。

なお、行政実例のうち、昭和二三年一〇月二三日自治行発五二号とあるのは、昭和二三年一〇月一二日自発九〇一号の誤りである。

9  同1の(九)の事実は争う。

10  同2については争う。

前述のとおり、監査委員が受理を違法に拒絶したことは全くない。

11  同3の事実は、すべて否認する。

三  被告の主張

1  監査委員において、本件各住民監査請求書(以下「本件各請求書」という。)を、昭和五九年六月六日付で受理し、その後、その監査を実施したものであることは、すでに述べたとおりであるが、当初、提出された本件各請求書を返戻したのは、法令上必要とされている「事実を証する書面」に不備があるため受理することができないからであり、しかもそれは事実上返戻したものであつて、監査委員らの該行為には違法性も過失も存しない。

すなわち、原告らから提出された本件各請求書を、昭和五九年六月二日付で原告らに返戻した経緯は、次のとおりである。

(1) 同年五月三〇日、原告らが兵庫県監査委員事務局を訪れ、本件各請求書を提出した。

当日、原告らと応対したのは、訴外坂田実兵庫県監査委員事務局長(以下「坂田局長」という。)ほか一名の職員であつたが、坂田局長が調べてみると、右請求書には、原告ら本人の作成に係る事実調査報告書と題する書面が「事実を証する書面」として添付されていた。

(2) それで、坂田局長は、原告らに、本件各請求書に添付されている事実調査報告書は原告田賀明本人の作成に係るものであるので、地方自治法二四二条第一項に規定する「事実を証する書面」としては不備なものと認められる旨教示した。

しかしながら、これに対し、原告らから一斉に強い反発があり、互いに十分な意思の疎通が図られるに至らなかつた。このため、坂田局長らが、最終的に判断するのは監査委員である旨を告げたところ、原告らは、本件各請求書を事務局に置いて帰つた。

(3) そこで、同日、兵庫県監査委員は委員会議を開き、検討が行われたが、右事実調査報告書は原告ら本人の作成に係るものであり、客観的に違法又は不当な事実を明らかにすることを要請されている「事実を証する書面」としては不備であり、このままでは受理できないとして、本件各請求書を原告らに事実上の行為として返戻することに決定し、同年六月二日付で原告らに返戻した。

(4) 原告らは、右の返戻された趣旨を了解し、同月六日、第三者作成に係る事実調査報告書等を添付して、あらためてそれぞれ住民監査請求書を右事務局に提出した。

(5) 右各請求書には、なお、いくつかの不備・不明な点があつたが、監査委員はこれを同日付で受理し、不備・不明な点については六月一一日付で補正を命じ、監査を行つた。

2  右述のとおり、本件各請求書の返戻は、法令上必要とされている事実を証する書面に不備があつたため、事実上返戻したものであつて、不受理処分をしたものではないし、また、この点については、原告らも十分理解したからこそ、事実を証する書面を補正した上、あらためて各請求書を提出したのである。

したがつて、被告監査委員らが、原告らに対し、請求書類が不備であるとして、監査請求書を返戻したことには、何ら違法な点はない。

なお、住民監査請求は、請求人が住民としての立場で行う客観訴訟であるから、請求人である原告らについて個人的に慰藉料請求権を生ぜしめるというようなことはありえない。

また、交通費等についても、当然に原告らにおいて負担すべきものである。

第三  証拠〈省略〉

理由

一原告らが兵庫県下の住民であることは当事者間に争いがない。

二〈証拠〉を総合すれば、次の事実が認められ、これに反する証拠はない。

1  原告らは、関西在住の弁護士、公認会計士、税理士、司法書士などの有志が行政監視活動を主たる目的として昭和五五年一二月一四日結成した民間団体「市民オンブズマン」の会員である。

2  右会員の一人である岩崎善四郎は、昭和五九年三月下旬ごろから同年四月上旬ごろまでの間、匿名の人物から二回にわたり電話で、兵庫県北摂整備局が違法、不当な公金支出を行なつているとの通報を受け、これを「市民オンブズマン」の会員に知らせた。

「市民オンブズマン」の会員は、そのころ右報告をもとに、住民監査請求手続をすること並びに同請求の担当者を原告らとすることに決めた。

3  そこで、原告ら三名は、同年五月ごろ監査請求書(以下本件監査請求書という)及び同請求書に添付する、不当な公金等の支出を証する書面として、事実調査報告書をそれぞれの名義で一通ずつ作成した。原告らにより作成された本件監査請求書計三通及び事実調査報告書計三通の各内容はすべて同一であり、かつ、それぞれの本件監査請求書及び事実調査報告書はそれぞれ同一作成名義人でなされていた。

そのうち原告田賀明の作成した本件監査請求書及び事実調査報告書は、別紙(一)、(二)記載のとおりである。

4  原告らに、前記岩崎善四郎、「市民オンブズマン」会員である弁護士小田耕平ほか二名が同行して同人らは、同年五月三〇日午前一〇時ごろ兵庫県庁にある被告監査委員事務局に赴いた。そして同人らは、同事務局総務課窓口に直接本件監査請求書を提出しないで、同課職員に対し、同事務局長との面会を求め、同事務局長室に入り、同室に居合せた同事務局長坂田実(以下坂田事務局長という)に対し、本件監査請求書及び前記事実調査報告書を提出したうえ、「市民オンブズマン」の会の趣旨及びその実績、本件監査請求に至る経緯をかいつまんで説明をした。

5  坂田事務局長は、前記各書類を閲読した後、原告らに対し、地方自治法二四二条一項でいう、不当な公金の支出等を証する書面(以下、単に事実を証する書面という)として、本件監査請求書に添付されている前記事実調査報告書の作成者がそれぞれ請求者である原告ら自身であり、しかも「市民オンブズマンが情報を得たものである」と記載されてあるだけであつて、誰が誰から情報を入手したものであるかが不明であるから、右事実調査報告書は事実を証する書面としては不充分ではないか、たとえば、新聞の切り抜きとか、領収書のような疎明資料を補正、追完する方がよいではないかと行政実例をあげて説明した。

これに対し原告らは、事実を証する書面は、私人の作成した事情聴取書でもよく、自治省の通達においても、事実を証する書面については、新聞記事、領収書などに限定していないなどと言つて、坂田事務局長の前記説明に反対し、かなりの時間同局長と押し問答を繰り返した後、同局長の手許に、本件監査請求書及び前記事実調査報告書を置いたまま、同局長室を退出した。

6  坂田事務局長は、原告らが前記退出後、前記監査委員事務局総務課職員に命じて本件監査請求書及び前記事実調査書にそれぞれ昭和五九年五月三〇日付の収受印を押捺させ、また、兵庫県監査委員から本件監査請求書をそのまま受理するかどうかの判断を受けるため、同日夕刻、同監査委員矢尾田京良、高田義一、住友良二、尾崎光雄らに対し、同委員会の開催手続をとつた。

7  坂田事務局長は、昭和二一年八月二一日被告職員に採用され、同四〇年四月一日から同五三年三月三一日までの間、被告監査委員会事務局において、主査、係長、課長補佐、副課長、課長の職務をし、同五三年四月一日から同五五年三月三一日まで他の課に転出した後、同五五年四月一日再び同事務局に戻つて次長兼課長に就任し、同五七年四月一日事務局長を命ぜられたものである。

三さて、原告らは、坂田事務局長は昭和五九年五月三〇日原告らの提出した本件監査請求書について違法にその受領を拒否したと主張する。

およそ、請求人が監査委員事務局に提出した住民監査請求書類に一見明白な瑕疵があつたとき、当該事務局職員はその請求人に対し、補正、追完あるいは任意の撤回を促すなどの行政指導をすることができるが、その場合、その請求人が任意でこれに応じるという態度を示さない限り、当該事務職員としては、右住民監査請求書を必ず受付(当該請求書を文書取扱規呈に基づき収受する行為をいい、当該請求書が後日監査委員の合議によつて受理決定されると、右受付日が受理決定の日となる)なければならないものであつて、前記監査請求書を適法なものとして受理するかどうかは専ら監査委員会の合議によつて決定される事項というべきである。

これを本件についてみるに、前記認定のとおり、坂田事務局長は、原告らに対し、前記事実調査報告書が事実を証する書面として充分でないのではないかと説明したが、原告らが右説明に納得しなかつたので、原告らの退室後、監査委員事務局総務課職員をして、本件監査請求書に、文書取扱規程に則り昭和五九年五月三〇日の日付けが入つた収受印を押捺させていること、また、同事務局長は、右同日夕刻、本件監査請求書を受理するかどうかを決定するための監査委員会招集の手続をとつていることが認められるうえ、同事務局長は、その在職の経験上、同事務局職員のする受付行為と監査委員会のする受理、不受理決定とを混同するような執務態度を最終的にはとるはずがないことを勘案すると、坂田事務局長は、昭和五九年五月三〇日本件監査請求書について受領(受付)拒否したことがないものというべきである。

なお、監査委員事務局長に監査請求の受理・不受理の審査権限のないこと、受付事務において行われるべき審査は書類の不備の指摘等形式的審査にとどめるべきであつて、その際に許容される行政指導もあくまでも任意的補正を促すにとどめるべきものであること、原告らには法律専門家である弁護士が同行し、かつ坂田事務局長の行政指導に従う意思のないことは明らかであつたのであるから、同事務局長としては、いたずらに書類の不備の有無等について議論することなく、すみやかに受付する旨明示したうえ、受理・不受理の決定は監査委員が合議により行う旨告知すべきであつたことを勘案すると、前記認定の原告らとの押し問答の際、同事務局長において、原告らに受付拒絶と誤解されかねない不適切な応対がなかつたものともいいきれないが、右事情は右認定を左右するものではない。

右認定に反する証人岩崎善四郎、原告田賀明本人の各供述部分は措信できず、ほかに右受領拒否を確認するにたる証拠はない。よつて、原告らの前記主張を採用しない。

四次に原告らは、被告監査委員らが同年六月二日本件監査請求書を違法に受理拒否したと主張する。

1 〈証拠〉を総合すれば、前二の6認定のとおり、坂田事務局長は、昭和五九年五月三〇日夕刻、被告監査委員矢尾田京良ほか三名に対して監査委員会開催手続をとつたこと、それにより同委員らは同日夕刻被告監査委員事務局に参集して同委員会を開催し、その協議の結果、前記事実調査報告書は、坂田事務局長が原告らに対して説明したとおり、事実を証する書面として疎明資料に欠けるところがあるため本件監査請求書をそのまま受理することはできないとして同書類を返戻する旨決定したこと、そして、同事務局職員は、同年六月二日原告らに対し、被告監査委員の名において「本件監査請求については事実を証する書面が不備と判断し受理できないので、これを返却する」との趣旨を記載した文書を添えて、本件監査請求書及び前記事実調査報告書を郵送して返戻したこと、以上の事実が認められる。

2  右認定事実によれば、被告監査委員らは昭和五九年六月二日原告らに対し、「不備であるから受理できない」旨記載した文書を添えて本件監査請求書類を返戻しているものであるから、本件監査請求書を不受理としたことが明らかである。しかし同書類返戻の右事実があるからといつて、直ちに同監査委員らが本件監査請求の却下処分をしたものと即断することができない。行政実務においては、請求書類の記載に不備があつたり、請求を却下すべき事由がある場合に、正規の処理手続によることなく補正又は拒否処分の方法として請求書類を返却することが間々あることは公知の事実であるところ、その返戻行為の法的性質は、個別の事情如何により、請求者に対し任意の撤回を促す事実上の行為、請求の却下あるいは不許可処分のほか請求書類の補正又は追完を命ずる事実上の行為のいずれかと評価しうる場合が存在する。

取下げ前被告高田義一本人尋問の結果によれば、監査委員は合議により、監査請求の対象事実中、別紙(一)監査請求書1・(2)記載の県有地の払下げ並びに監査請求書添付の別紙違法支出一覧表9記載の金九六〇万円の飲食費支出につき請求内容が不明確ないし不特定であるが、その他の点は請求内容は特定しているから、その点は受理したうえで後に補正を求めれば足りる、しかしながら、請求書に添付された事実調査報告書(別紙(二)記載のとおり)は、情報提供者及びその聴取者の氏名の記載がなく。かつ内容的に信ぴよう性が低いものであるから、原告らの監査請求には地方自治法二四二条一項所定の「事実を証する書面」の添付がないものと判断し、監査請求書類等を返戻したことが認められる。右事実に前記二5認定のとおり、原告らは明らかに請求の任意の補正・撤回に応じない態度をとつていたこと、監査委員は本件監査請求書等を返戻する際「事実を証する書面が不備であると判断し受理できない」旨返戻の理由を示していることを総合考慮すると、右返戻行為は、請求書に添付すべき事実を証する書面に不備があるため不適法であるとしてなした請求の却下処分と解するほかはない。

右取下げ前被告高田義一の供述中には、右返戻行為は請求人の意思を尊重し、請求人が任意に補正することを期待してなしたものである旨の供述部分があるけれども、監査委員が請求人に対し補正の指示をしていないことは同人の自認するところであるうえ(前記二5認定のとおり、受付時に坂田事務局長は事実調査報告書に不備がある旨原告らに述べているが、右は監査委員の補正の指示にかわるものではない。)、返戻行為の法的性質は、監査委員が請求人に対して示した返戻の理由、請求書の記載内容、従前の行政実務の運用状況等の客観的事情を総合考慮して判断すべきものであり、監査委員の主観的意思如何により左右されるものではないから、右供述部分は右認定を左右する資料となるものではない。ところで、請求書には地方自治法上監査請求権があり適法な応答を受けるべき地位が保障されているのであるから、請求書に補正の機会を与えない点、請求者にとつて趣旨が不明確な点において返戻行為による却下処分は通常の却下処分に比し、請求者(被決定者)に不利益な処分というべきである。従つて、請求書等に重大かつ明白な瑕疵があるなど不適法な請求であることが明らかで、その瑕疵が補正できないか補正が期待できない場合を除き、返戻行為による却下処分はできうるかぎり避けるべきものというべきである。

3  そこで、前記返戻行為が被告監査委員らの違法な公権力の行使であつたかどうかについて判断する。

思うに、地方自治法二四二条一項が住民監査請求に当つて、違法、不当な公金の支出等につき、その事実を証する書面を添えることを要求しているのは、事実に基づかない単なる憶測や請求人の主観だけでみだりに監査を求めることのないよう、乱請求による弊害を防止しようとすることにあると考えられ、このように同書面添付を要求する法の規定には実質的理由があるから、事実を証する書面を添付しないでした住民監査請求は不適法であると解すべきである(名古屋高裁金沢支部昭和四四年一二月二二日判決、行裁集二〇巻一二号一七二六頁参照)。

同条五項には、監査委員は、監査を行うに当つて、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならない旨定めているが、同項は、監査委員において、監査請求を適法なものと受理決定した後、監査を行うに当つて、請求人に対し、請求にかかる事実についての証明資料提出の機会を与えるようにしたものであり、同項がこのような手続を予定しているからといつて、前記事実を証する書面を添付しない監査請求を適法なものと解することは、同条一項の文言に反し、とうていできない。もつとも、公財政の管理・運営の民主的コントロールをその狙いとしている住民監査請求制度の趣旨並びに監査委員は財務会計の専門スタッフを擁し調査権限を有することに鑑みると、事実を証する書面添付の要件はこれをいたずらに厳しく解釈すべきものではなく、右要件不備による却下は事実を証する書面が全く添付されていない場合その他これと同視しうる場合など必要最小限にとどめるべきものと解するのが相当である。

しかして、前記事実を証する書面は、請求人に対して監査請求にあたつて要求されている証拠資料であるから、その性質上、証明に対比して要証事実の真実性につき低度の蓋然性をもつて足る疎明資料でよく、その形式を問わないものである。

これを本件についてみるに、原告らが昭和五九年五月三〇日被告監査委員事務局に提出した本件監査請求書及び事実調査報告書は、前二の3認定のとおりであつて、それによれば、事実調査報告書の末尾には、「以上の請求にかかる事実については、昭和五九年三月二七日午後三時頃からおよそ一時間と同年四月一〇日ごろ午後二時からおよそ一〇分間にわたり市民オンブズマンが情報を得たものである。」と記載されているだけであつて、その文面からは情報提供者が誰であり、誰がどのようにして情報を受けたかの点が不明であり、しかも、本件監査請求人と事実調査報告書とが同一名義で作成されていたことが認められる。

しかしながら、事実調査報告書の内容を検討するに、右報告書には、原告ら主張の飲食費等不当支出に関する事実につき、日時、場所、関係者の人数、身分関係等が比較的詳細に記載されていることが認められるところ、前記のとおり、同報告書末尾記載の「……オンブズマンが情報をえたものである。」なる記載は情報提供者及びその聴取者が全く明らかでない点において不十分であり、従つて、ひいては右報告書の疎明資料としての信ぴよう性に疑問の生じる余地がない訳ではないけれども、右記載内容を合わせ考慮すると、右報告書は全体として地方自治法二四二条一項の事実を証する書面たる資格を有していたものあるいは少なくとも若干の手直しをすればその資格を有しうる書面であつたものと認めるのが相当である。(現に、後記認定のとおり、原告らは昭和五九年六月六日本件監査請求書を再提出したところ、その際添付された事実調査報告書は末尾を「……わたり内部告発者とみられる人から市民オンブズマン事務局に電話があり、市民オンブズマンの報告者岩崎善四郎がこれを傍受し内容を整理し、この報告書を作成したものである。」と訂正しているほかは当初提出した事実報告書と同一であつたが、監査委員がこれを受理している。)けだし、乱請求防止の観点からは右程度の疏明資料を要求すれば足りると考えられるし、他方、監査手続は請求が特定していればこれを進めることが可能であつて、このような場合、受理することが住民監査請求制度の趣旨に合致する取扱いと解されるからである。なお、疏明資料の信ぴよう性に疑義があるため、当該添付資料が「事実を証する書面」に該当するか否かの判断をするについては、監査委員の裁量に委ねられる面のあることは否定できず(もつとも、右裁量はできるかぎり受理する方向で行使することが住民監査請求制度の趣旨に合致するものである。)、本件の事実関係のもとでは、前記事実調査報告書は事実を証する書面たる資格がないとした監査委員の判断に裁量権逸脱の違法があるとまで断じうるものではない。

そうすると、監査委員がなした前記返戻行為による却下処分は、少なくとも事実調査報告書につき、適式の手続きにおいて、前記のとおりの補正をする機会を与えなかつた点で適正な手続によりなされたものとは認められず、違法な処分であつたものというべきである。

そこで、右違法な処分をなすにつき、監査委員らに故意・過失が存在したか否かについて検討するに、前記のとおり、行政実務においては、請求書類の記載に不備がある場合等に、正規の処理手続きによることなく補正又は却下処分等の趣旨で請求書類を請求者に返戻する扱いが間々みられること、右取扱いは、一般論としては、請求者の適法な応答を受けるべき地位を脅かすおそれがあるから適切な取扱いとはいえないが、主観的には返戻者が任意の補正を促す趣旨でなす場合等具体的事情いかんによつては右取扱いを首肯しえないわけではないこと、前記事実調査報告書には、情報提供者から情報を聴取した具体的事情が明らかでなく、しかも、情報聴取者の氏名も明らかでないなどの瑕疵があつたこと、〈証拠〉を総合すれば、原告らは昭和五九年六月六日被告監査委員会事務局に対し本件監査請求書を再提出し、事実調査報告書の末尾の「……市民オンブズマンが情報を得たものである」との部分を、「……内部告発者とみられる人から市民オンブズマン事務局に電話があり、市民オンブズマンの報告者岩崎善四郎がこれを傍受し内容を整理し、この報告書を作成したものである」旨訂正補充し、市民オンブズマンニュース号外・「領収書内容」と題する書面(同年六月一日ころ聴取した電話の内容を記載したもの)を新たに添付したこと、被告監査委員らは同月八日右監査請求書を受理する旨決定したことが認められること等前記返戻行為前後の事情及び従前の行政実務の運用状況に照らすと、監査委員には右返戻行為が違法であることにつき認識がなく、かつ、その点につき過失もなかつたものと認めるのが相当である。

以上の次第で、前記返戻行為は違法ではあるが、右行為をなすにつき監査委員に過失があつたものとは認められないから、結局、右返戻行為の違法を理由とする原告らの本件請求は理由がない。

五さらに原告らは、坂田事務局長は同年六月六日原告らが再提出した本件監査請求についても受領拒否をしたと主張する。

しかし、右主張事実に沿う〈証拠〉はたやすく措信できない。かえつて、〈証拠〉は、原告らが前同日被告監査委員事務局に再提出した本件監査請求書をその提出時に自ら収受し、同日付の収受印を押捺していることが認められる。よつて、原告らの右主張も理由がない。

六また原告らは、被告監査委員は、右再提出した本件監査請求書を受理拒否したと主張する。

しかし、右主張事実に沿う〈証拠〉は、たやすく措信できない。〈証拠〉(いずれも新聞記事)によつては、右主張事実を認めるに足らない。

かえつて、〈証拠〉を総合すれば、被告監査委員矢尾田らは、同五九年六月八日同委員会議を開き、再提出された本件監査請求書については、前記四の2の(二)に認定のとおりこれを受理する決定をしていること、そして、坂田事務局長は同月一三日原告田賀明らに対し、本件監査請求書が受理されている旨知らせていることが認められる。なお、地方自治法二四二条四項の「請求の日」の解釈上、本件監査請求が受理された日は、前判示のとおり、前記監査委員らが受理決定をした日でなければ、原告らがそれを知つた日でもなく、本件監査請求書に収受印が押捺された同年六月六日であり、前法条四項の「六〇日以内」の起算日は、右受理した日の翌日である。

ちなみに、〈証拠〉を総合すれば、被告監査委員らは、前記のとおり本件監査請求の受理決定をした後、前記条文の定めに従い、前記受理翌日の同年六月七日から六〇日以内である同年八月三日監査を行い、同日付公報で監査結果を公表していること、同委員らは、その間の同年六月一一日会議を開いて、原告らに対する証拠の提出及び陳述の機会を同年六月二五日と指定するとともに、請求事実について三項目にわたる補正命令を出すことを決定し、被告監査委員事務局職員は、同月一三日原告らに対し、それらの通知をしたこと、原告らが右補正に応じない回答をしたので、同委員らは補正を求めた三項目のうち二項目(別紙(一)の請求趣旨(1)のうち昭和五八年五月一七日の約一五万円の支出関係、同じく同年五月から同五九年三月までの約九五〇万円の支出関係)については、その請求が一年経過後のもの、あるいは請求の特定に欠けるとの事由で審査の対象から除外し、その余の請求事実については、関係人の事情聴取の結果、いずれも理由がないという監査結果をしていることが認められる。

以上の次第で、原告らの前記主張も理由がない。

七そうすると、原告らの被告に対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

よつて、原告らの請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官広岡保 裁判官杉森研二 裁判官飯田恭示)

別紙(一) 監査請求書

兵庫県北摂整備局の違法支出補填等是正措置監査請求

1、請求の趣旨

(1) 兵庫県知事坂井時忠、同北摂整備局長竹村章、同局次長飯田周作及びその関係者らは、昭和五八年五月から昭和五九年三月頃までの間のべ六回以上にわたり、有馬温泉「古泉閣」等、数店の旅館、割烹において違法・不当な会議接待費を、自ら費消又県会議員、三田市長、部下、第三者が費消することを了承して、その「飲食費」・タクシー代等合計約一、〇六〇万円を支出せしめ、また違法支出を認識しながらこれを放置している。その結果兵庫県は一、〇六〇万円以上の損害を被つた。

(2) 兵庫県知事及びその関係者らは、三田市灰又所在の県有地(三〇m2)を、前記飯田周作、同県土木管理課井坂係長及びその関係者の仲介のもとに、違法に三田市の喜多忠一氏に無償で払い下げた。その結果兵庫県は、前記土地の価格相当の損害(約三〇〇万円)を被つた。

(3) 兵庫県知事およびその関係者らは、昭和五十九年一月三田市総合庁舎食堂を、前記飯田周作仲介のもとに、三田市所在の「でんすけ」に不当なる廉価で賃貸させた。その結果兵庫県は、適正な賃料(月二〇万円)との差額相当の損害(年間約二〇〇万円)を被つた。

(4) よつて請求人はこれを是正する措置として以上の下記項を請求する。

①兵庫県が前各項の損害について(1)肩書の知事坂井時忠、同北摂整備局長竹村章、同局次長飯田周作等関係者及び(2)の喜多忠一並びに「でんすけ」に対して、それぞれ連帯して一、五六〇万円の返還を求めること。

②同県北摂整備局の会議接待費等の使途の明細(日時、場所、接待相手等関係者、支出金額等)を明らかにさせ、違法な支出を是正するために必要な措置を講ずること。

③(2)及び(3)の各契約を解除すること。

2、請求者 別紙請求者目録記載通り。

以上地方自治法第二四二条第一項の規定により、別紙事実証明書を添えて必要な措置を請求する。

昭和五十九年五月三十日

兵庫県監査委員殿

添付資料 1 事実調査報告書

請求人 住所 姫路市別所町別所二八七―一一

氏名 田賀明

生年月日  年 月 日

市民オンブズマン

職業税理士

別紙違法支出一覧表

(支出年月日) (場所)(所在地)

(相手方名) (支出金額)

1、昭和59年5月 「古泉閣」 有馬

兵庫県土木部職員 金15万円

北摂整備局職員ら

2、昭和59年11月22日

「藤の坊」 三田市

井元文治県議他同県幹部職員ら 金約35万円

3、昭和58年12月22日

「律泉」  三田市

北摂整備局元職員 金約10万円

4、昭和59年1月12日

「如月」  三田市

同県土木部・都市住宅部職員   金約10万円

5、昭和59年1月13日

「蓬来」  三田市

同県監査委員・決算委員会・県議他   金約10万円

6、昭和59年2月11日

「某所」  三田市

地元業者・公団職員 金約20万円

9、昭和58年5月〜昭和59年3月

上記料亭他

飯田周作他職員 金約960万円

(合計   金約1,060万円)

別紙(二) 事実調査報告書

兵庫県北摂整備局は北摂方面を中心に住宅開発や、ダム建設工事等の公共事業を中心に企画施工を行なう兵庫県庁の行政局の一部であるが昭和四八年頃より、同局次長の飯田周作氏は昭和五八年中において次のような接待をなし公金や事業収入金を不当に支出した。

1、五八年五月下旬有馬

古泉閣において夜六時頃より一〇時頃まで兵庫県の土木部の幹部及び北摂整備局の幹部を接待した。

費用は一五万円程度。

2、昭和五八年一一月一二日

兵庫県三田市浄水場起工式直後、午後〇時三〇分頃、井元文治県会議員(現兵庫県県議会副議長)ほか県の職員約一〇人を一人あたり三万円程度の費用で夜一〇時頃まで「藤の坊」(三田市所在)で接待した。のちタクシーで自宅まで送つた。費用タクシー代共で三五万円程度。

3、昭和五八年一二月二二日

同北摂整備局OB会と称して、同北摂整備局の元職員一〇人、一人一万円程度の予算で「律泉」(同三田市)で接待し同じくタクシーで送つた。費用一〇万円程度。

4、昭和五九年一月一二日

兵庫県土木部並びに都市住宅部の上層部を数名「如月」(同三田市所在)に接待した。費用一〇万円程度。

5、昭和五九年一月一三日

兵庫県監査委員を含む決算委員会の県会議員数名を同市所在の「蓬莱」に接待し、いずれも終了後タクシーで送りそれらを公金で賄つた。費用一〇万円程度。

6、昭和五九年二月一一日

住宅公団の打合せと称して三田市小野所在の「某所」にて地元の業者と公団の職員を接待した。参加人員は数名。費用二〇万円程度。

7、飯田周作氏は同県が所有していた官民境界地である兵庫県三田市灰又の土地三〇m2を同市に所在の喜多忠一氏に無償で払い下ることの仲介をした。この時兵庫県土木管理課係長井坂某氏も同席した。このため県は同土地評価額で三〇〇万円の損害を被つた。

8、昭和五九年一月

三田市の総合庁舎が完成され、そのうちの食堂(約三〇〇m2は設備一式を県が整備)同市所在の「でんすけ」に使用せしめるにつき飯田周作氏が斡旋した。

ところが通常の評価で一ケ月二〇万の相場の家賃にもかかわらず「でんすけ」に対して、一ケ月三万円の家賃とし保証金等は一切徴収しないという貸借人にとつて非常に有利な契約を結ばせた。このため県は一ケ月一七万円、年間約二〇〇万円の損害を被つた。この時ほかに喫茶「ジャンボ」など三件などから賃借申込があつた。

9、その他飯田周作氏は毎晩のように上記「律泉」「如月」「蓬来」等県の幹部職員や三田市長ならびに市幹部、三田警察署幹部等を連れて麻雀や飲食をなし、その後タクシーで送り迎えをするなど宴会を伴つた会合を私物化し、公金を浪費している。その額はおよそ月間最低五〇万円にも及び、さらに宴会後のタクシーの送り迎えについて播州交通、有馬交通の三田営業所等の車を利用し、比較的遠距離が多く、その支払いも一ケ月三〇万円に及んでいる。これらの浪費額は年間九六〇万円となっている。

以上については昭和五九年三月二七日午後三時頃からおよそ一時間と四月一〇日頃午後二時からおよそ一〇分間にわたり市民オンブズマンが情報を得たものである。

昭和五九年五月 日

請求人 姫路市別所町別所

二八七―一一

田賀明

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